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非合理性

創業経営者がいなくなれば普通の企業へ戻っていく、そこに中小企業のチャンスが生まれる

創業経営者の偉大な功績によって、小さな企業から大企業へ変
貌するところは、少なくないだろう。
なんといっても創業経営者は、人がもつ非合理性を活かして、
自らの企業に独創性を持ち込んでくる。
創業者が考え抜くことにはユニークなものが多い。

6月12日の日本経済新聞朝刊に『ゲーム経営進化、ドンキの
元気にキャラにして社員競わす 創業者の教えを継承』という
見出しで記事があった。
創業者の安田さんはユニークな方だ。
ドンキの事業は急成長し、今では売上高が2025年約2兆3
000億円になっている。
店舗数は、約800店舗となり、さらにオリンピックを買収し
ながら規模を拡大していきそうだ。
ロビンフッドという新業態にも挑戦している。

それでも安田さんから直接薫陶を受けた社内の人間は、現在で
は11名ほどだ、と記事に書いてあった。
創業の個性が発揮されるのは、やはり創業者が存命中だ。
さらに、創業者に直接薫陶を受けた人間の存在は欠かせない。
創業者は、自らの考え方や行動の原点をドキュメントとして書
き残すようなのだが、それらはいずれ風化する。

理由は簡単だ。
ドキュメントは、合理性そのもになるからだ。
いわゆる頭で考えるようになる。
創業者は、心と行動で自分の思いを伝えようとして働くのだが、
創業者がいなくなれば頭と理屈で行動するようになる。
いつしか創業の精神は枯れていく。
これは必然だ。
人間だけが心をもち、創業者のまわりの人間たちは、その思い
と行動によって共感しながら仕事をする。

これは合理的なことではないのだが、人間が共感することで膨
大なエネルギーが湧き、次々と人は行動へ移していける。
創業者がしっかりとした考えをもち、人の心に響く言葉と行動
力によって、社員のエネルギーは解放されていく。
こんなマネジメントに合理性は、そもそもない。

創業者がいなくなれば、ドラッカーではないが、成果を出せる
仕組みを作る必要がある。
それにより人間がもつ非合理性は消失するのだが、組織機能は、
人間を合理性のなかに閉じ込めて企業の成果、いわゆる利益を
追求していく存在に代わる。

ソニーでも同じだ。
今のソニーに盛田さんや井深さんがもっていた非合理性に基づ
く考え方や行動は少なくなっているだろう。
普通の人間が経営者になれば、必然的に合理的な経営になって
いくものだ。
社会や大きな企業ほど、組織を構成する人間の分布は、正規分
布の中心に近づくからだ。

中小企業にチャンスが巡ってくるのは、創業者という人間の存
在があるからだ。
しかも、非合理的な存在だからでもある。
ただし、人間がもつ非合理性には弱点がある。
その最大のものは、中小企業の創業者に多いワンマン経営とい
う非合理性だ。
これは企業の成長拡大に対して、もっとも悪影響を及ぼす。
卑近な例でいえば、ニデックの永守さんだ。
もっとも、永守さんは、ニデックを2兆円規模に成長させたの
だから、そのプロセスのすべてに問題があったわけではないだ
ろう。

だからこそ、創業経営者がもつ非合理性と同時に、自ら経営に
関して学び、研鑽を重ねなければならない。
人間がもつ非合理性を活かすために、経営という学びが必要に
なる。
ドンキの安田さんは『ビジョナリーカンパニー』から多くの経
営について学んだ、と自著『運』に書いておられた。
中小企業の創業経営者は、私がみてきた範囲だけでも、なかな
かおもしろくて非合理性を有する人物は多かった。
それでも、二人の創業経営者を除いて、他の創業者は、非常に
悪い意味での非合理性(ワンマン経営)だった。
結果は、当然だが企業の倒産や身売り、あるいは経営者の夜逃
げだった。

創業経営者がもつ非合理的な人間性は大切なのだが、ソニーの
盛田さんや井深さんのような非合理性(社会的価値を作る)を
有する人物は少ない。
だからこそ、ソニーは世界的企業になった。
中小企業の創業経営者は、もう一度書いておくのだが、人間が
もつ非合理性にって社内に創造的な雰囲気と活気を生み出し、
いろいろなことに挑戦する社風や企業文化が育ってくる。
そしてそのまわりの人間たちの行動によって事業が、次々と成
長し、拡大していく。
中小企業の創業経営者は、そのようなプロセスを楽しめる人間
を集めよう。
人口の正規分布の中心付近に、おもしろい人間は少ない。
その人たちは、どちらかと言えば、仕組化された組織機能をも
つ大手企業で仕事するのに向いている。
中小企業は、正規分布の両サイドの人間を活用しなければなら
ない。
そこに非合理性をもつ人間がいると思われるからだ。

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