あらゆる設備に問題が潜んでいるのだが、目に見えない問題は
経営陣を説得することがむずかしい。
毎日、安全に操業できているからだ。
現場の声は届きにくい。
その根本的な問題は、安くて良い製品を生み出すことに注力し
てきた昭和の経済活動にある、と私は考えている。
老朽化して設備を更新するためには多額の費用がかかる。
それでもなくとも安売り体質で資金に余裕がない。
設備などの更新は、問題がある箇所からパッチワークで直して
いくことになる。
それでもなんとかなっているうちはよいのだが、突然起こる爆
発事故や今回のような熊本地震で発生した煙突の倒壊事故など
で、多くの問題が目にみえるようになる。
今回の煙突倒壊は、2016年に発生した熊本地震において、
企業はその問題点を洗いだしておかなければならなかった。
多分だが、一部社員は設備の問題を洗い出したはずだ。
しかも、建築基準に照らして補強工事をしていたらしいのだが、
本当に倒壊を防げる補強工事でなかったことは、今回の熊本地
震が証明した。
この点、企業は補強工事における経営判断を精緻に分析すべき
だ。
資料:日経ビジネス
今回の煙突倒壊は、わが国の設備における現在地を示す出来事
でもある。
設備には、水道管や下水管、あるいは橋梁、トンネルなど多く
の設備があり、しかも昭和の時代に敷設や工事が完了したもの
が多くあるだろう。
わが国の企業や国民の特徴は、前(表)しかみないことだ。
だが、設備にかかわらず物事には裏がある。
設備にはメンテンナスや設備の更新が必要になるのだが、それ
をコストと考える経営者は、それらに手を入れることをしない。
不作為を貫く。
企業経営の表である利益にしか目がいかないからだ。
こうして更新されない設備は問題を抱えて稼働しており、いず
れ経営者の誰かがババ(事故)を引くまで続く。
そして経営は徐々に傾いていく。
今の時代、昭和とは自然環境の前提が大きく変わってしまって
いる。
経営者は、これまでの延長線で経営を考えていると、考えられ
ない隘路に引きずりこまれてしまう。
自然環境を含む設備の更新が求められる時代だ。
目先の利益を優先させるか、大局的な見地から課題解決を目指
すかは、ひとえに経営者の経営判断に委ねられる。
昨日の日本経済新聞には『日本製紙の折れた煙突が象徴 G7で
最も老朽化した日本の製造基盤』という見出しで記事がでてい
た。
記事の一部だが『必要性を認識していても設備更新がすぐに進
むとは限らない。KPMGコンサルティングのプリンシパル、大
森健二氏は「現場が『このままでは危ない』と訴えるだけでは、
経営層は動けないことが多い。設備を放置した場合の自社の損
失額や取引先への供給体制に及ぶ影響などを定量的に示すこと
で、投資判断につながる」と指摘する。
現場は異音や腐食から故障の兆しをつかんでも、いつ壊れ、工
場が何日間止まり、損失がいくらに膨らむのかまでは正確に予
測しにくい。一方、増産や新製品への投資は、売上高や利益へ
の効果を数字で示しやすい。設備がまだ動いている限り、保全
や更新は緊急性が低いと判断されて先送りされやすい。事故を
防ぐ効果を経営層が比較可能な数字で示せるかが問われる。
それでも、全国の老朽設備を一度に更新することはできない。
限られた資金と人手を優先的に振り向けるべきなのは、故障や
倒壊が人命被害につながる設備だ。作業場所や住宅の近くにあ
る煙突や鉄塔など、倒壊時に人を巻き込む恐れがある設備から、
設計の再検証や点検、補強、更新を急ぐ必要がある。9人の命
を奪った八代工場の煙突倒壊は老朽設備を使い続ける日本企業
に、更新の優先順位を改めて突き付けている』とあった。
私は、設備に関して何度もコメントを書いている。
私のレベルでさへわかることなのだが、わが国の経営者は動こ
うとしない。
また、どこかで爆発事故などが発生し、人命が失われていくの
だろう。
大企業は、オールリスクで対応できる保険を付保していること
が多い。
損害は金で補填するだけだろう。
経営者が変われない要因はいくつもある。
