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変わり者

おもしろいと思うところは、困難な道だった

私は自分がおもしろいと思うことをやるタイプの人間だ。
だが、実際、おもしろいと思うことは困難の連続だった。
それでも自分のおもしろさのほうが勝っていた。
はじめの困難は、営業職から総務や人事部門への転職だった。
別に10年近く営業したからと言って、管理部門の仕事ができな
いわけがないと、勝手に自分で決め込んでいた。
ところが、社会というやつは、そういうものではなかった。

あんた、経験もなく35歳で総務や人事にかわれるわけないだ
ろう、と転職エージェントの担当者に言われた。
そんなこといったって、すでに営業はやめてしまっているし、
総務や人事しかやらない、と話をすると、その担当者はあきれ
ていた。
こんなところで時間を使っていても無駄なことだと、それから
は自分で求人誌を購入して毎週転職を希望する企業へ履歴書を
送った。
何社だしただろうか。
100社くらいは履歴書を送ったのだが、すべて戻ってきた。
ご丁寧な文面が添えられていた。
変わり者がいない社会に、毎回報告ありがとうございます、と
心のなかでお礼をいっていた。

どういうわけか、私には悲壮感がない。
悲壮感があったのは妻のほうだ。
そんな妻がソニー子会社の人事担当者募集の求人広告を新聞で
みつけてくれた。
すぐに履歴書を送った。
子会社でもソニーがついているので、これはむずかしいだろう
と思っていたのだが、私自身やってみるタイプなので挑戦した。

結果的にうまくいったのだが、結論から言えば、ソニー子会社
の元社長もおもしろい人だった。
ソニーの前身である東京通信工業時代に入社されており、ソニ
ーのマネジメントそのもののような人だった。
もっとも、入社した後は、おもしろいところだったのだが、困
難の連続だった。
それでも私自身は、困難のなかにおもしろさがたくさんあった。

自分でやらかした選択だったのだが、類は友を呼ぶ、だ。
変わり者は、変り者にしか理解されない。
これが素直な実感だ。
あのときの出会いと、その後、総務や人事、そして経理の仕事
をさせてもらったことで、今の私はある。
だけれども、それぞれのスキルだけではなく、ソニーの古きマ
ネジメントを体得できたことが、今の自分を支えている。
自分そのものだったからだ。
出会いというほかない。

ソニー子会社を辞めてから、ベンチャー企業や中小企業、ある
いは中堅企業で仕事をさせてもらったのだが、それぞれにおも
しろさと同時に、困難なことに立ち向かっていった。
だが、どのような企業でもマネジメントに華がなかった。
おもしろさがないのだ。
それは決定的にソニー子会社と違っていた。
ソニーのような会社は、この国にはないことを知った。

ソニー以降、残念だが、変わりの者の経営者と出会えていない。
一人くらい変わり者の経営者がいてもよいと思うのだがいない。
それがわが国の現状なのだ。
私は、それでもあきらめていない。
それが私の道だからだ。
そんな道は、楽しいに決まっている。

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