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東証

上場廃止が増加しているようだが、国内活動が主体であれば非上場のほうが機動的な事業運営がしやすい

上場するメリットは、資金調達を株式市場を通じておこなうこ
とができることだが、優良な非上場企業は社債の発行ができる。
銀行からの借入(間接金融)から株式発行による資金調達(直
接金融)へ移行することが可能だが、その恩恵を享受できるの
は、優良な企業に限られる。

株主の前に経営能力がさらされる経営者は、毎期業績を上げる
ことに努めなければならないし、一旦業績が悪化すれば資金調
達どころではない。
株主から罵声を浴びることになる。
私が在籍していた総務部門では、経済紙などの業績情報が流れ
ただけで、電話が鳴りやまなかった。
社内情報を話すことはできないのだから、開示された情報に基
づき対応することになる。
業績予想は、有価証券報告書に開示している。
また、業績が悪化しそうな場合、証券取引所の規則に基づく適
時開示(タイムリー・ディスクロージャー) を行う必要がある。
公表している業績予想と実際の見込み値に一定以上のズレが生
じた段階で、「業績予想の修正」 を発表しなければならない。

しかし、悪い業績でも良い業績でも、四季報などでは、独自に
企業業績に関する取材をしており、上場企業の開示よりもはや
く情報をだしてくることがある。
こうなると株式を扱う総務部門などは戦場だ。
上場するとは、上場後も事業を成長させていくことが求めらる
のだが、それはマストに近い。
一部の株主は、毎日投機をおこなっていることが多く、なかに
は証券会社の推奨だったといって、私が在籍していた企業に文
句の電話をしてきた主婦がいた。
主人に内緒で株取引をした、と愚痴を言っていた。
くれぐれも株式の取引は、自己責任でおこなってください。
企業努力はしているのですが、経営能力の差は、いかんともし
がたいものがあります。

昨日の日本経済新聞には『東証の上場廃止、3年連続で過去最
多に 企業は非公開での成長模索』という見出しで記事がでた。
『東京証券取引所への上場を廃止する企業が3年連続で過去最
多を更新する。ファンドと組んで自ら非公開化する場合と、市
場改革により上場維持基準を満たせなくなったケースが目立つ。
上場を前提としない新たな成長の形が日本企業に求められてい
る。

年内の廃止が確定した企業は4日時点で128社となり、25年通年
の125社を超えた。廃止の可能性がある監理銘柄にも29社が指
定されており、件数はさらに増える公算が大きい』記事の一部
だが、日本企業の現在地は、事業を成長させていくことがむず
かしくなっているということだ。

資料:日本経済新聞

このような状況は、わが国特有の現象かと思っていたのだが、
そうでもないようだ。
米国の現状を同紙は『ニューヨーク証券取引所(NYSE)や米
ナスダックなど米国の取引所の上場企業は過去30年で半減し、
25年末は合計で約3900社にとどまる。一方で未公開のまま成
長を続ける企業は多く、直近では過去最大となる時価総額1.7
兆ドルでIPOしたスペースXなど大型銘柄の上場が目立つ』と
報道していた。

上場準備は、私がみてきた範囲だけでも大変な作業であり、
しかもベンチャー企業では多くのリソースを割かれる。
上場後の管理負担も相当なものだ。
そのうえ、経営者は成長への強烈なプレッシャーを受ける。
国内市場が人口減少などで経済の成長性が低下していくなか、
経営は昭和の時代とはまったく違うものになっている。

上場廃止をおこない身軽になって国内市場へ再挑戦する企業が
増えることはやむを得ないことだろう。
とくに国内市場が主戦場の企業には厳しい経営のかじ取りが求
められる。
上場していることで株主の意向に沿えない経営が続くほど、企
業の改革と挑戦の可能性が低くなることが予想される。
養命酒のように事業をツムラに譲渡したようなM&Aは、今後も
増えるだろう。

私は、ベンチャー企業の上場には疑問をもっている。
とくに、この国のベンチャー企業は、いうほど成長力をもって
いる企業が少ないからだ。
さらに取り巻きの証券会社やベンチャーキャピタルなど、上場
時の収益(キャピタルゲイン)狙いで稼いでいる。
事業の成長性を見る目はなく、目先の利益を追求する姿勢だけ
が際立ち、わが国を支えていく気概などない、と私は感じた。

この国の上場は、経営者の経営能力に頼ったものである以上、
ある程度の規模になり、私は最低でも売上高1000億円以上
の規模だと思っているのだが、さらに海外進出を狙い、海外投
資家からも注目される事業をおこなっている企業に限定されて
よい、と考えている。
この国のベンチャー事業は、事業がうまく育ってくれば出口戦
略は、大手企業への売却が一番だ。
無理をしても成長性が乏しい事業では、上場後の運営は地獄を
みることになる。
小規模でも独自性がある事業をおこなっていれば、事業を売却
するチャンスは生まれるし、私がみてきたベンチャー企業は3
億円で大手企業に事業を売却したのだが、良い判断だ、と今で
も思っている。
現在も非上場企業として事業は順調だ。

ベンチャー企業でも事業規模を、非上場のままで拡大すること
だ。
事業規模は、投資家からすれば最大の魅力だ。
初期の段階で投資できれば、それに越したことはないのだが、
わが国の場合、米国のように投資するチャンスが少ない。
ベンチャーがもてはやされる時代は過ぎ去ってきたようだ。
その点、事業化している中小企業のなかには魅力的な事業を有
している企業は少なくない。
このような企業は、キャッシュフローが潤沢で、そもそも上場
の意欲がないところも少なくない。

株式市場に上場する意味が問われてきている時代だ。

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