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出会い

師との別れは寂しいが、道場は、いつも心のなかにある

長く師と仰いでいた方が、昨年90歳でなくなられた。
その年のお正月まで会話をかわしていた。
私は、営業の仕事から管理部門の仕事へ転職したかったのだが、
管理部部門の経験がない転職活動は困難を極めた。
ただ一社、ソニー子会社の当時の社長だった方、いわば私の師
匠になる方との出会いで管理部門の仕事に就くことができた。

なにかを学ぼうとすれば、先ず自分で行動を起こし、誰かに教
わる必要がある。
ゴルフでも同じだった。
ゴルフを教わったプロは、やはり私の師匠だ。
仕事は、営業の仕事であれ、管理部門の仕事であれ、スポーツ
同様に実践を通して学ばなければ習熟することはできない。
いわば型を学ぶことになる。
自分のなかに仕事の型ができれば、ようやく自分で仕事を進め
ていくことが可能だ。
仕事でもスポーツでも同じなのだが、型を学び習熟してくれば、
その人が元々もっている個性は自然とでてくる。

この方は、仕事に対して厳しかった。
ご自身が人事労務畑の出身だったこともあり、私は徹底的に仕
事で投げ飛ばされた。
それでも食いつて仕事を体で学んだ。
あまりの厳しさに、私は自分の仕事の限界をみるようだったの
だが、この方は、ソニー時代(東京通信工業)は、もっと厳し
かった、と話された。
私は、これより上があるのか、とただただ驚いた。
ソニー子会社時代は、まさに私の仕事の道場だった。
全身全霊で鍛えてもらった。
スポーツ同様、仕事は肉弾戦だ。
あの日があるから、今がある。

営業の仕事、管理部門の仕事、あるいはスポーツを学ぶにも、
なにをするにも人との出会いが必要になる。
人間関係を築くことが苦手な私でも、仕事を体で習得するため
には、人間を通して学ぶほかない。
私は、どんなに無謀な挑戦に思えることでも迷いはないのだが、
そういう言葉より、そもそも無謀という感覚がない社会性が欠
落した人間なのだろうが、そんな私だが、この方との出会いが
なければ、自分を活かすチャンスは生まれなかっただろう。

出会いとは、不思議なものだ。
最初は小さな出会いなのだが、その後、仕事を学ぶことで大き
な出会いにかわっていった。
この方は、私の仕事の師となった。
ソニー子会社を離れてからのお付き合いのほうが長くなった。
いろいろな話を聞かせてもらった。
この人といるだけで楽しく、そして幸せな時間をもらった。

なんでもない日常の積み重ねだったのだが、能力がない私は、
この方の話をよく聞いて、仕事をしてきただけだが、大きな影
響を受け、今ではこの方との出会いが人生を支えてくれる梁に
なっている。
この方との学びには損得勘定がなかった。
企業社会のなかでみれば、単に上司と部下の関係だったのだが、
上司を超えた人間的な優しさがあった。
私は、そのやさしさにずっと甘えてきた。
とても心地よかったからだ。
人間関係が苦手な私だが、この方との縁を大切にしてきたおか
げで、今があり、私の人生を心地よくしてもらっている。

亡くなられて1年を過ぎたのだが、あの日の道場は、いつまで
も私の心のなかにある。

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