企業買収は、売却側企業からみれば買収価格が高ければ売るも
のではない。
企業価値を、買収後、どのように向上させていけるのか、とい
う買収内容の検討が必須だ。
売却額が高ければ売るのであれば、ハゲタカファンドなどは、
事業を切り売りし企業自体が解体されることも考えられる。
買収される側の企業は、相当慎重な検討が必要だろう。
今日の日本経済新聞の記事の一部だ。
『経産省は買収価格が高ければ賛同しなければならないといっ
た誤解があるとして研究会を再開。指針の趣旨を周知するため、
追加見解として買収対象会社の取締役会が悩む点などを整理し
たQ&A集などの文書の策定を進めている。
Q&A集の案では「高値の買収価格であることのみをもって、望
ましい買収にあたるものではない」と明示。例外的となるが、
買収価格が低くても最も企業価値を向上させる提案であれば、
そちらに賛同できることなどを説明している。
企業価値向上につながらないケースとしては、買収者が従業員
や取引先などの取り分を減らして株主の取り分を増やしたり、
買収対象会社の資産などを担保に買収資金を借り入れ、返済の
負担が残ったりすることなどが考えられる』
資料:日本経済新聞
昨日書いたのだが、企業や事業の売却は、今後増えていくだろ
う。
事業や企業の買収は、資本の論理に飲み込まれていくプロセス
なのだが、わが国が経済大国から転げ落ちていくプロセスでも
ある。
それでも旧態依然の経営では、将来の展望がなければ、資本の
力によって企業を買収することで事業や企業の未来が開けてい
く可能性がある。
そのとき、買収される側の経営者には、自社の事業の価値をみ
る目がいる。
単に買収提案額が高ければよいものではない。
事業や企業の将来像をみておく責務がある。
これまでも、いろいろなケースのM&Aがあったのだが、私が良
い売却だったと感じたのは、旧林原の事業を引き継いだ長瀬産
業への譲渡だ。
現在は、ナガセヴィータ株式会社となっている。
主力事業だったトレハロースは、国内シェアトップクラスだ。
世界で初めてトレハロースの量産化に成功したナガセヴィータ
株式会社(旧:株式会社林原)だ。
同社が製造・販売する「トレハ®」は、食品や医薬品など幅広
い分野で広く使用されている。
企業は、その発展途上に多くの課題にぶつかる。
すべての課題を克服できれば、それが一番よいのだが、資金と
の兼ね合いで克服できないときがある。
そんなとき事業を売却することも重要な打開策となる。
なにもトレハロースのような優秀な事業がなくとも、中小企業
ですらベースとなる事業は好調な場合がある。
問題は経営者にあることが多い。
こんな場合、事業売却は、株主(創業経営者)、社員、取引先、
金融機関などにとっても有効な手段となる。
買収してくれる企業は、社員を活用しながら事業を成長させて
くれるところが一番だ。
その場合、必ずしも買収額が一番高い企業ではないケースがあ
る。
創業経営者が考えなければならないのは、自分の懐へ入るお金
ではない。
あくまで事業のこれからだ。
借入金があれば、売却交渉は厳しさを増す。
そんなときこそ、経営者の姿勢が問われる。
事業を売却しようという経営者は、私がみてきた範囲だが、社
員の行く末を考えていた。
売却した資金ですぐに借入金の返済をする姿が印象的だった。
その額は数十億円だった。
その後、この経営者は、小さな会社を興し、ほそぼそと事業を
している。
社員はたった一人だ。
売却された企業に在籍していた社員は、従来よりもよい処遇を
得た。
事業の売却ができない経営者ほど、社員のことなどなにも考え
ていない。
だからこそ、いつまでも事業を引っ張り、さらに経営を悪化さ
せる。
資金が続く限り、交際費を使い会社を自分の欲望のために利用
する。
そして、ある日、なんの責任も取らず夜逃げした。
社員の賃金は未払いとなり、社員は、まさに路頭に迷うことに
なった。
事業が厳しい局面にあるときほど、経営者の人間性がはっきり
とみえた。
私は事業家になれない。
自分のことは自分が一番よくわかる。
事業を起こし、事業が悪化すれば、私は夜逃げするタイプだ。
こんな人間が会社を興してはならないと、このとき体得した。
そのことだけでも学ぶことができたことは幸運だった。
転職で家族さへ路頭に迷わすところだった私だ。
そもそも起業は無理なのだ。
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